介護離職への道(06)自主返納できず
自主返納できず
入院する1~2年前(2015-2016)から運転免許書の自主返納を親父に頼んでいました。帰省すると親父が駅まで迎えに来てくれます。しかし、段々と運転が怪しい、怖い、と感じていました。
その少し前、3~4年くらい前(2013-2014)の帰省中だった思います。乗用車からアシスト付き軽自動車に買い替えを促すために車を見に行きました。当時、アシスト付き軽自動車の車種は限られていました。人を検知してストップするやつです。新車なのでそれなりの価格はします。私がいれば、もう少し値引き交渉もできたハズですが、ほぼ言い値で買ったようです。アシスト付きなので、少しは安心できたことを覚えています。
しかし、数年経って見ると助手席側に擦り傷がありました。乗用車でも擦ることは無かったのに。乗りやすい軽自動車で擦っているのでボチボチ止めないと、と思いました。テレビニュースでも高齢者ドライバーの人身事故をよく耳にするようになってました。最近では、あの池袋の惨事です。やっと裁判が始まったようです。
ある時、「運転免許書はあっても良いけど、もう車は諦めて免許証の自主返納をやったらどうだ。本当に何かあってからでは取り返しがつかない。タクシーを使う練習もしておいた方が先々は絶対に良いと思う」の主旨のことを言ったら、親父が切れて「そんなことは、誰にも言われたことがない。誰にものを言っているのだ。いつまで、こいつはここにいるのか、さっさと帰れ」と怒りました。「他人がそんなこと、言ってくれるわけないだろう。家族しか言えないだろう」と言い返しましたが、答えはありませんでした。
田舎は自動車が無いと買い物、病院、すべてが不便になります。生活の足として必要なのです。それは、非常に良くわかるのです。年寄りの運転ミスで幼い子供が亡くなる事故がかなり増えました。もし、そういうことになったら謝っても済まないし、せっかく平和に老後生活を送って来たのに、一遍にどん底に落ちます。母親は親父から車を取り上げたら、もっと外に出なくなる。もっと早く老いが進むので、もう少しだけ待って欲しいと言いました。そういう問題では無いのだけれど。
両親が入院した折の帰省時に、警察署に「自主返納」について聞きに行きました。休日に市役所、銀行などは開いてませんが、警察署は開いているので時間的には助かります。その専門の人は、お休みでいませんでした。それでも、一応、親切に教えてくれました。しかし、ネットに載っている以上の情報は何もありませんでした。
自主返納には、「本人の意思」の確認が必要だと言うことでした。ちょうど親父が入院していました。「入院中で難しい」と返答すると、「都合の良い時間に病院に出向いて意思確認をする」とのことでした。
どうにか免許証を返納する気になっているけれど、警察の人が来れば緊張して、嫌だと言いそうです。せっかく了承しているのに、「委任状とか他に何か方法は無いのですか?」と聞いて見た、が無いらしい。日本では「本人の意思」で返納するか、医者が診断書を書いて止めるかしかないそうです。自主返納すればタクシー割引など特典が受けられますが、医者が診断書を書いて強制的に返納した場合には何らの特典は無いとのことでした。
いちばん近くで接している家族が危ないと思っているのに、本人の判断・運動能力が落ち「本人が危ないと認識できない」のに、何ら手を打つことが出来ないことが分かりました。しかし、どこまで「本人の意思」が重要なのか?と思いました。確かに、無理に免許書を無効にしても、乗りたければ無免許でも乗るでしょう。
うちの場合、最終的に「車は無し、自主返納できず」になりました。時系列がはっきりしませんが、入院見舞いに帰省した次の帰省時だったと思います。親父の老いが進んで、車が壊れて動かないと錯覚していました。また、思い出したように運転されると以前より恐ろしいと思いました。車の修理と言うことにしました。早々、弟に車を引き取りに来てもらいました。結局、免許証の有無より車が無いのが一番安心です。親父には申し訳ないけれども。これで、実家には車が無く、私も非常に不便になってしまいました。次の帰省時に買い物用に自転車を買いました。
少し、後のことですが介護休暇を申請するとき、認知症の診断書が出て「認知症」が明らかになりました。あのパソコンやってた、新しもの好きの親父、免許証には臓器提供まで記載した親父です。85才くらいになれば「運転免許証を自主返納する」と決めていたと思います。間違いなくそう考えていたと、私は今でもそう思っています。自分では決めていたが、想像以上に早く老い、自分の年齢を忘れ、認知症が進んでしまい、「自主返納」出来なかった、のだと思います。亡くなった後、整理していると「終活本」が出て来ました。そんな関連の講演も聞いていたようです。ちゃんといろいろ整理をしようと考えていたが、できなかったのだと思いました。自主返納できなかった親父の運転免許証は、処分できず、引出しに残ったままです。
※メモ
「運転免許証の返納」、本当に難しいです。早めにタクシーを使う練習が必要かも知れません。しかし、田舎のタクシーは激減しています。講習程度で「白タク」を認めないと無理じゃないかと思います。自動運転の車が自宅に迎えに来る時代はどれくらい先だろうか?私の時代には無理っぽいです。